愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
ちらりと彼を見つめて、きゅっと唇を引き結ぶ。
それでいいのだ。どんなに彼が素敵でも、格好よくても、好きだったとしても、彼とは恋愛できない理由がある。
「よーく、かんで食べてね」
朝から食欲旺盛な彼を笑顔で見守って、目の前にある儚くて穏やかな幸せをかみしめた。
三十分後。身支度を整えた彼が部屋から出てきた。
筋肉質な肉体を上質なブラックスーツにくるみ、バーガンディの上品なネクタイを締めている。
髪は軽く整えられ、表情はキリッと引き締まり、朝とは別人のように凛々しく雄々しい。
こうしてみると、デキるサラリーマンにしか見えないのだが、彼の職業はちょっぴり特殊だ。
「いってきます」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
頼もしい笑みを浮かべて、玄関を出ていく。
今はスーツを着ているけれど、仕事場に着いたらオレンジ色の救助服に身を包み、人々を守るため、身を粉にして働く。
私はリビングの隣にある畳敷きの居間に向かい、仏壇の前に膝をついて手を合わせた。
「お兄ちゃん。今日も北斗さんを守ってあげてね」
仏壇にはふたり分の遺影。
ひとりは母。もうひとりは、オレンジ色の救助服を着て、腕を組んで仁王立ちする兄――乙花遊真。
それでいいのだ。どんなに彼が素敵でも、格好よくても、好きだったとしても、彼とは恋愛できない理由がある。
「よーく、かんで食べてね」
朝から食欲旺盛な彼を笑顔で見守って、目の前にある儚くて穏やかな幸せをかみしめた。
三十分後。身支度を整えた彼が部屋から出てきた。
筋肉質な肉体を上質なブラックスーツにくるみ、バーガンディの上品なネクタイを締めている。
髪は軽く整えられ、表情はキリッと引き締まり、朝とは別人のように凛々しく雄々しい。
こうしてみると、デキるサラリーマンにしか見えないのだが、彼の職業はちょっぴり特殊だ。
「いってきます」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
頼もしい笑みを浮かべて、玄関を出ていく。
今はスーツを着ているけれど、仕事場に着いたらオレンジ色の救助服に身を包み、人々を守るため、身を粉にして働く。
私はリビングの隣にある畳敷きの居間に向かい、仏壇の前に膝をついて手を合わせた。
「お兄ちゃん。今日も北斗さんを守ってあげてね」
仏壇にはふたり分の遺影。
ひとりは母。もうひとりは、オレンジ色の救助服を着て、腕を組んで仁王立ちする兄――乙花遊真。