愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
反省会がひと段落すると、私は店舗の奥にある倉庫にこもって在庫の確認を始めた。
タブレット端末片手に、資材をひとつひとつ検品する。
六畳程度の細長い部屋にラックを敷き詰め、資材をぎゅうぎゅうに詰め込んでいる。段ボールの上に段ボールが積まれているから確認も少々面倒くさい。
手前は常温の食品で、中央は紙ナプキンやストロー、テイクアウト用のカップなどの消耗品。
奥には季節ごとの装飾品のような、めったに取り出さない備品が保管されている。
そして、部屋の一番奥にはなぜか非常階段へ繋がるドアがある。
以前入っていたテナントがこんな構造に改装したようだ。
この狭い雑居ビルで空間を有効活用するため、非常階段への通路を倉庫にしたのだろう。
「真誉~。私、ちょっと銀行と郵便局に行ってくる」
ドアの向こうから声が聞こえた。私も声を張り上げて「いってらっしゃーい」と答える。
黙々と作業に集中し、一時間くらいは経っただろうか。
まだ優多さんのただいまという声かけがない。月末に近いから銀行も郵便局も混んでいるのかもしれない。