愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
集中力が途切れて来たのか、ふとした瞬間に彼の言葉が蘇ってきた。

『真誉以上に大事な女の子なんていない』

そう言いながらも拒むのは、やっぱり私に女性的な魅力がないからかな?

考えても仕方がないのに、悩んでしまう。

「万一、もしも万一、北斗さんも私のことを好きでいてくれたとしたら……」

それでも私を拒む理由に、ひとつだけ心当たりがある。

「私が消防官である彼を受け入れられないから……?」

過去に『どうして自ら危険な職業に就くんですか』と責め立ててしまったことがある。

私が消防官という仕事を忌諱していると、彼はよく知っている。

だが今だからこそわかるのは、消防官という責任ある職務に就く、頼もしくて志の高い彼でなければ、私は好きになっていなかっただろうということ。

「私は矛盾しているんだわ……」

向き合うべきは彼ではなく、自分自身なのかもしれない。

整理できない気持ちを抱えたまま、確認作業を続けていると。

「……なんだか焦げ臭い?」

火の気などあるはずもないのに、燻るような匂いが漂ってきて、眉をひそめる。

一応倉庫内を確認するが、異常はなさそうだ。

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