愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
上半身を起き上がらせようとすると、彼はこちらにやってきて「まだ寝ていろ」と、そっと私の肩に手を置いた。

「無事でよかった。本当に……よかった」

声を詰まらせながら私を寝かせる。心配してくれていたのが伝わってくる。

私が頷くと、冷静になったのか彼はチェアに座り直し、大きく息をついて膝の上で手を組んだ。

「ありがとう。助けに来てくれて」

「当然だ。一番大事な人を助けられなくて、レスキュー隊を名乗れるか」

彼がうつむいたまま答える。『一番大事な人』――そんなフレーズに、とくんと胸が震える。

「ここにいて大丈夫なの? 仕事だったんじゃ?」

「ああ。目覚めるまでそばにいてやれって八尾さんが。俺は真誉の唯一の肉親みたいなものだろうからって」

『唯一の肉親』――大事な人ってそういう意味ねと納得して、どこか切ない思いを抱える。

そんな私を気にもとめず、彼が言葉を続ける。

「俺がレスキュー隊でいること、真誉は反対だったんだろうけれど。今日、心底この仕事に就いてよかったと思ったよ」

そう呟いて、横になる私を覗き込む。いつになく真っ直ぐで、誠実な眼差しだ。

「真誉を助けられた。俺はきっとこの日のためにレスキュー隊員になったんだ」

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