愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
隠す必死などなかったんだ。心のまま、見返りなど考えずに、ただシンプルに愛していると告げるだけでよかった。

「この流れで言うのはズルいぞ」

彼がちょっぴり困った顔で苦笑する。

「私のこと、家族としか見られないならそれでいいの。ただ言いたかっただけだから――」

「拒まれる前提で勝手に話を進めないでくれ。言ったはずだ。一番大事だって」

そう言って彼は私の手を持ち上げ、口もとに持っていき、甲に優しいキスをくれる。

温かな唇の感触に、ふわりと体が浮き上がった気がした。

いや、浮いたのは体ではなく心だ。こんな触れ合い方をしたのは初めてで、いつもとは違う距離感に、心がふわふわ浮かれたのだろう。

「俺に真誉を幸せにできるのか、その権利があるのか、ずっと悩んでいた。俺と一緒になれば、苦しませてしまうんじゃないかって」

「私は北斗さんがいい。幸せかどうかは自分で決めるわ。それに、一番大事なのは北斗さんがなにを望むかだと思うの」

「俺の望みはひとつだ」

そう言って手を解くと、私の顔の横に手をついて、影を落とした。

「真誉に支えてもらいたい。この先ずっと」

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