愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~


北斗さんの週休日、私たちは揃って兄の墓参りに向かった。

「俺たちのこと、ちゃんと報告しないとな」

想いを通わせてから一週間近くが経つけれど、キス以上はしていない。

身も心も結ばれるのは兄への報告を終えてからと決めているようで――。

「報告もせずイチャついたら、遊真が化けて出そうだ」

「律儀ね。お化けなんて本当は信じてないんでしょう?」

「アイツの場合は特別だ。今でもひょっこり姿を現して、『真誉を泣かしたら許さない』くらい言われそうな気がしてる」

確かにその通りだなあと、くすくす笑う。本当に妹想いのいい兄だった。

北斗さんも親友に筋を通したいのだろう。

「それに、今日は真誉に会わせたい人がいるんだ」

「会わせたい人?」

「ああ。今の真誉ならきっと受け止められる」

いったい誰だろう? 答えを教えてもらえないまま、家から数駅離れたところにある兄の眠る霊園に向かう。

参道を進んでいくと、墓石に向かって手を合わせる喪服姿の男女が見えた。

男性の方は抱っこ紐で赤ちゃんを前抱きしながら黙とうしている。

女性はしゃがみ込んで手を合わせ、深く祈りを捧げていた。

彼らは足音で私たちに気づき、並んで深々と頭を下げる。

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