愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
そこまで近づいてようやく、彼らが熱心に参っていたのは、兄の墓なのだと気づいた。

「吉柳さん、ご無沙汰しております」

声をかけてきた女性に、北斗さんも軽く会釈して応じる。

「来てくださってありがとうございます。真誉、こちらは奥村さんだ」

紹介され、私も「はじめまして」と挨拶をした。

私に会わせたかった人とは、彼らなの?

女性は私に対しても深々と頭を下げ、憂いに満ちたなんとも言えない表情を向けた。

「乙花遊真さんの妹さんですね。お会いして、感謝と謝罪を伝えたいとずっと思っていました」

「感謝と……謝罪?」

兄の知り合いなの? 戸惑い北斗さんを見上げると、すっと眼差しを細め、気遣わしげに微笑んだ。

「奥村さんは、あの事故で遊真に救助された方なんだ」

ハッとして彼女を見つめる。

そのとき、一筋の風が吹きつけて彼女の髪を揺らした。

頬から首筋にかけて火傷の痕。私はごくりと息を呑む。

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