愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
「助けてもらい、本当に感謝しています。ですが、同時に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。私は救われたにもかかわらず、乙花さんがお亡くなりになって、ご家族にはなんとお詫びしたらいいのか……」

女性の目に涙が浮かんだ。男性は彼女をなだめるように肩に手を置く。

「ですが、どうしても感謝を伝えたくて。あの日、妻が助からなかったら、この子は産まれていませんでした」

そう言って男性が赤ちゃんの頭を優しく撫でる。

すやすやと眠る愛らしい男の子を見て、胸が熱くなった。

兄の救った命から、新たな命が生まれた。

私はようやく人を助ける、その先にあるものに気がついた。誰かを救って、それで終わりではないのだ。

命も、幸せも、無限に紡がれていく。

「私たち家族を救っていただきありがとうございました。そして、本当に申し訳ありませんでした」

深く頭を下げる彼らに、私は大きく首を横に振った。

「……謝罪など、やめてください」

私は大きな勘違いをしていたのかもしれない。

兄は危険な職業に就き、犠牲になったのだと思っていたけれど――そうじゃなかったのだ。
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