愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
胸につかえていたものが取れすっきりとした。ようやく兄の死をきちんと受け止められた気がする。

「お兄ちゃんの死は無駄なんかじゃなかった。意味のある誇らしいものだった。そうわかったので、もう大丈夫です」

北斗さんの大きな手が私の頭にのる。その手を取って握り返し、彼を見上げた。

「ありがとう、北斗さん。ご夫婦に会わせてくれて」

彼らに会えたおかげで、また一歩、前に進める気がする。

北斗さんは柔らかく目を細め、優しく微笑む。

それからふたりで兄の墓に向き合い、交際を報告した。

兄の前で北斗さんを恋人と呼ぶのはどこか照れくさく、同時に嬉しくもある。

きっと兄も複雑な顔をして悪態のひとつもつきながら、喜んでくれているだろう。そんな姿がありありと目に浮かんだ。




その日の夜はカツカレーを作った。兄の高校受験前夜に母が作ってくれたゲン担ぎのメニューだ。

結果は見事合格で、以来、入試や消防官採用試験など勝負前夜の夕食は必ずこれだった。

今日のカツカレーは私なりにアレンジを加えている。

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