愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
エピローグ
火災から八カ月。ナチュラルカフェ『グリーン*Glee』は新天地で規模を拡大し、倍の客席数でリニューアルオープンする。
開店を三日後に控えた店内で、優多さんと私はささやかなパーティーをした。
「さ、乾杯しよう!」
優多さんがドリンクを手に取る。アルコールは扱わない店なので、グラスの中身はいずれもフレッシュジュースやスムージー、炭酸水だ。
「北斗さんもどうぞ」
同伴者として招いた北斗さんにビーツジュースを手渡す。
「ありがとう。ビーツジュースなんて、飲むの初めてだ」
「ビーツは栄養がたっぷりなのよ」
そして、優多さんの隣に座る五十嵐さんは、ハーブが香る有機ジンジャーフィズを高く掲げた。
「じゃあ、新たな門出を祝しましてー」
「なんで君が言うのよ。しかも門出ってなに? 卒業式じゃないんだから」
優多さんが辛辣なツッコミを入れる。
彼女がこのパーティーに『恋人を連れてくる』と言ったときは、どんな人がくるのだろうとドキドキしていたけれど、まさか五十嵐さんが来るとは思ってもみなかった。