愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
私はトートバッグからノートを取り出し、新作の出来上がりイメージとレシピの載ったページを開いた。さっそく打ち合わせ開始だ。

「秋といっても九月は残暑が厳しそうだから、夏の疲れに立ち向かうってコンセプトはどうだろう? ビタミン重視メニューはさっぱりめに仕立てて、高たんぱくメニューは秋らしい魚介を加えて――」

ノートを見せると、彼女は満足したように口角をニッと引き上げた。

「さっすが真誉。これとこれ、第一候補でいこう。見た目も鮮やかだし、SNS受けもよさそう」

満足してもらえたようで、私はホッと安堵する。

「早速作ってみるね」

スタッフルームからエプロンを取ってきてキッチンに立つと、優多さんが「ところでさあ」と声をあげた。

「真誉がメニューを考えるときは、やっぱり『北斗さんに食べさせてあげたい♡』とか思って考えるわけ?」

調理道具を準備する手が止まる。振り向くと優多さんがにやにや顔でこちらを見つめていた。

「やだなあ、優多さん。北斗さんとはそういう関係じゃないってば」

「ずっと一緒に暮らしてるのに? あんなにカッコいい男のなにが不満だっていうのよ」

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