愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
同居を開始したばかりの頃、優多さんにそんな相談をしたっけ。
北斗さんの帰りが遅いと、なにかあったんじゃないかと気が気じゃなくなってしまう。
兄のことがあったから余計に神経質になっているのだと思う。
今でもそう。毎日仏壇に手を合わせて『お兄ちゃん、北斗さんを守ってあげて』と祈っている。
「でも、北斗さんは今の仕事を大事にしてるから。辞めてほしいなんて言って、困らせたくないの」
誇りを持って働いている彼に、今の仕事を辞めて安心安全な職業に就いてくださいなんて言えない。
「あんたなりに気を遣ってるのね」
納得してくれたのか、優多さんはため息を混じらせ頬杖をつく。
北斗さんとは一定の距離を保たなきゃ。彼の意志を尊重するためにも、自分が傷つかないためにも。
とはいえ、両親も兄もいなくなってしまった今、そばにいてくれるのは彼だけだ。
「……でも。このメニューを一番食べてもらいたいのは北斗さんかな」
キッチンに食材を並べながら呟くと、ホールから「ぷっ」という笑い声が聞こえてきた。
「ごめん、素直すぎて思わず笑っちゃった。まあ、今の真誉の原動力が北斗さんだっていうことは、よーくわかった」