愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
美波と三津屋さんは趣味や好みも合うらしく、さっそく意気投合している。

私と十倉さんはお見合いのごとく、穏やかな質疑応答を繰り返しているけれど、なんとなく落ち着かない。

「おふたりはどうして今の職業を選んだんですか?」

美波の質問に、まず答えたのは十倉さんだ。

「安定しているからかな。残業もそこまでないし、自分の時間を大切にできると思って。趣味を仕事にするときついって話を聞くから」

「それなー」

三津屋さんが乗っかる。

「俺は中途半端に好きを仕事にしたから後悔してるよ。趣味も満喫できないし、仕事も想像以上に楽しくないし、なにより忙しいし。一番ダメなパターンだった」

「三津屋さんはメーカー勤務なんですよね? しかも大手の」

同じメーカー勤務の美波は共感できるのか、興味津々だ。

「そそ、白物家電の企画とか、開発の管理業務をやってるよ。大手に入れたから安泰だと思ったんだけど、残業はきついし、工場の連中は無茶苦茶言うし、開発チームは頭が固くて話にならないし、上司は横暴。もうストレス溜まりまくりだよ」

うんざりした顔で項垂れる。隣で十倉さんが苦笑した。

< 57 / 155 >

この作品をシェア

pagetop