愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
キッチンにいた優多さんが「私がこき使ってるみたいに言わないでよ」とクレームをつける。思わず私は苦笑した。

「楽しいですよ、好きで始めたことですし。上下関係もありませんから。頑張った分だけお客様が反応してくれるので、やりがいがあります」

素直に答えたのだが、三人は驚いたような、どこか呆れたような顔をする。

「仕事を好きって言えちゃうなんてすごいなー。まあ、自分たちで開いた店だもんね」

三津屋さんと十倉さんはどこか複雑そう。私と彼らの間に大きな隔たりを感じた。

「で、でも、結婚を考えるなら堅実に働ける男性がいいかなって思いますよお。将来、きちんと家族を支えてくれそうですし」

美波の言葉にふたりの表情が和らぐ。

「まあ、仕事がつらいからっていちいち辞めてたら、生計が成り立たないし、ローンも組めないからね」

「将来、家庭を持つって考えると、夢ばっかり追ってられないしな」

彼らに合わせて私も苦笑いを浮かべる。

社会に出て働くって、そういうことなのかもしれない。

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