愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
北斗さんたちのことを言いたいのだろう。日々命がけで闘っている彼らと比べるのも酷な気がするが。

「優多さんは? 普通の男じゃ満足できないって言ってたけど。付き合うなら自分と同じ経営者がいい?」

「そういうわけじゃないけど……そうねえ」

優多さんは食器を片付けながら、どこか切なそうな声をあげた。

「それこそ私は、消防士とか。人生かけて仕事してる人の方が格好いいと思うわ」

ドキリとしてテーブルを拭く手が止まる。

消防士って、北斗さんのこと?

日頃から『格好いい』『好みにドンピシャ』とは言っていたけれど、もしかして本気で付き合いたいって思ってる?

「あ、別に、北斗さんを紹介しろとか言ってるわけじゃないからね? たとえ話よ」

彼女が慌てて否定する。

「そう、なの?」

本音かな? また私に気を遣って遠慮しているのかな?

でも、紹介してほしいと言われなくてホッとしている自分がいる。

おかしいな。優多さんなら信頼できるし、自信を持って北斗さんに紹介してあげられるのに。

北斗さんが別の誰かに取られるのは嫌だって思ってしまう……。

私はなんてワガママなのだろう。自嘲するように笑みをこぼした。

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