愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
「仕事に誇りを持っている人って、素敵に見えるよね」

「同意ー」

「優多さんも素敵よ?」

にっこりとごまかすように笑いかけると、彼女は屈託のない表情で「真誉もね」と笑った。




片づけを終えると、まだ事務仕事が残っているという優多さんに戸締まりを任せて、一足先に店を出た。ビルの階段を降り、大通りに出る。

いつもより帰宅時間が遅いから、北斗さんが家で心配しているかもしれない。

【これから帰ります】とメッセージを送ろうと、バッグに入っている携帯端末に手を伸ばしたところで――。

「あ! いたいた!」

後方から声をかけられ、驚いて振り向いた。

通りの向こうから歩いてくるのは三津屋さんだ。

「どうしたんですか? なにか忘れ物でも?」

あれから一時間以上経っているのに、どうしてまだこんなところにいるのだろう。

尋ねると、彼はほんのり赤い顔をしてへらっと笑った。

「さっきまで美波ちゃんとふたりで飲みに行ってたんだ。帰りがけに、真誉ちゃんはどうしてるかなあと思って店に寄ったら、ちょうど姿が見えて」

わずかに頬が紅潮しているのはお酒のせいらしい。美波はすでに帰ったようで、姿が見えない。

「気にしてくださってありがとうございます。じゃあ、途中までぜひ。駅の方向でいいんですよね?」

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