愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
第一章 『家族』以上、『恋人』未満
翌朝六時五十分。リビングに食欲をそそる香りが広がる。

グリルを引き出して、鮭の焼き具合を確認。表面にパリッと焦げ目がついていて、中はふわふわ。オレンジ色の身の上で油が跳ね、じゅうじゅうと音を立てている。

「うん。いい感じ」

出来栄えに満足して、ふうっと息をついたところで――。

「おはよう。今朝も豪華だな」

突然背後から話しかけられ、私は「ひゃっ」と飛び上がった。

慌てて振り向くと、Tシャツにイージーパンツを穿いた部屋着姿の彼が立っていて。

「大丈夫か? また転ぶなよ?」

昨夜の一件が頭をよぎったのか、私の腰を支えてくれる。

そしてやっぱり今日も彼は私を意識してくれない。

いや、不満というわけではないんだけど。

腰に触れる大きな手にそわそわしてしまう自分が憎らしい。

「大丈夫だよ、平地で転んだりしないから。昨日のは……わ、忘れて!」

なんとか苦し紛れにお願いすると、彼は苦笑しながら「わかったよ」と後頭部に手を当てた。

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