敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
『夫婦になったんだ。一緒に出掛けるのはデートじゃないのか?』

 隼人さんの言葉に、とっさに反応できずに固まる。両家への挨拶を終え、美奈子さんの後押しもあって先日の大安に私たちは婚姻届を提出した。もろもろの名義変更は戸籍ができてからになるのでまだ実感がまったくわかない。隼人さんとの関係も相変わらずだし。

 だからこそ彼の口から、夫婦と言われるとなんだか照れくさくて妙に気恥ずかしい。

 硬直している私に隼人さんはフォローを入れる。

『負担に感じるなら――』

『い、いいえ。遊園地……隼人さんと行ってみたいです』

 彼の発言を遮り自分の意思を伝える。さすがにデートとは口に出せなかったけれど。

『なら、決まりだな』

 そう言って頭を撫でられ、土曜日に出かけることが決まった。

 それからまず、私が悩んだのは服装だ。彼と両家への挨拶などを除き、改めてふたりで出かけるのは実は初めてで、隼人さんがデートと口にしたのもあり頭を抱えるはめになる。

 結局、淡いピンク色のボウタイブラウスに白のスカーチョを合わせた。

 おかしくないよね?

 ちらりと視線を下にし、続けてこっそりと運転する隼人さんを盗み見る。

 今日の隼人さんはグレーのニットセーターに黒のテーパードパンツとシンプルな装いだが、その分彼のスタイルのよさが際立っている。いつも思うのだが、同じテーブルについても、足の長さがまったく違うのは身長差だけの問題ではない。
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