敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
 それから数々のアトラクションを楽しみ、私はすっかり遊園地を満喫していた。昼食は遊園地内のレストランで済ませ、午後からは一段と来場者が増えたように感じる。

 隼人さんは私にずっと付き合ってばかりだけれど、いいのかな?

 うしろめたさを感じるのは、肝心のシャッツィのエリアに足を運べていないからだ。

 何度か近くまで行ったが、長蛇の列を見ては引き返すを繰り返している。並ぼうかと提案する私に対し、関係者である自分たちが中に入るくらいなら、他の来場者に楽しんでほしいと隼人さんは答えた。

 たしかにそうだと納得する。

「すごく賑わっていますね。嬉しいです」

「あの様子なら期間の延長か、次の開催を確約できそうだな」

 隼人さんと話しながら、入れずじまいのシャッツィのエリアを後にしようとした。

「未希ちゃん?」

 そのとき不意に声をかけられ、辺りを見渡す。すぐ近くでベビーカーを押している女性が目に入った。

「早川さん」

 彼女は私の元へゆっくりと近づいてきた。セーターにジーンズとシンプルだが、可愛らしい雰囲気は相変わらずだ。年齢は私より十歳年上だと言っていたけれど。最後に会ったときから髪がすっかり伸びている。

「久しぶり、元気?」

 早川さんは、産後に家事代行業を依頼してきて私がしばらく自宅へ通わせてもらった相手だ。

「はい。みことちゃん、大きくなってる!」

 ベビーカーにちょこんと座っている赤ちゃんを見て、私は笑顔になった。
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