敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
 ある意味、隼人さんは最初から大きな看板を背負っている状態だ。そんな中でシャッツィの名と共に業績を大きく伸ばしている。

「だからもっと自信を持ってください。けっしてブランド名だけではないです。早川さんもシャッツィのおもちゃを娘さんが気に入ってくださったからこちらに来たって言ってましたし。シャッツィの名に恥じない商品を、時代に合わせて維持し、進化し続けるのってすごく大変なのに、隼人さんはそれをやり遂げていますから」

 隼人さんのことを心から尊敬している。社長としても、ひとりの男性としても。

 私の勢いに圧倒され、目を丸くしている隼人さんを前にし、ふと冷静になる、思いのままに捲し立て、もしかするとものすごく見当違いなことを言ってしまったかもしれない。それどころか失礼に当たる発言があったのでは?

 余計なことはしないって決めていたのに。

 内心で自信を叱責し、隼人さんに謝罪をしようとする。

 ところが、その前に隼人さんの手が頭に伸びてきて、そっと撫でられた。

「ありがとう」

 先ほどまでとは打って変わって穏やかな声で告げられる。

「え?」

「未希はすごいな」

 顔を上げると、隼人さんは笑っていた。けれどどこか切なそうで、私は視線を逸らす。

「いえ……」

 どうしてそんな表情をするの? なにが引っかかっていたの?

 次々と浮かぶ疑問を飲み込む。踏み込むわけにはいかない。そんな立場でも権利もない。
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