敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている～契約結婚なのに心ごと奪われました～

　ところが、隼人さんといつも一緒にいることについて必要以上にからかわれ、つい反発心で言ったのを隼人さんが聞いていたとは思ってもみなかったそうだ。

「あまりにも必死なものだから、今までの張り詰めていた気持ちが吹っ飛んだよ」

「よかったですね」

　すっきりしたような面持ちの隼人さんに、私もホッとする。すると隼人さんがじっと私を見つめてきた。

「未希が励ましてくれたから、あいつと向き合う気になったんだ。未希のおかげだよ」

「そ、そんな。私はなにもしていません。隼人さんが決意して行動された結果です」

　すぐさま返したら、隼人さんは笑みを浮かべたまま優しく私の頭を撫でた。

「久しぶりに会ったとき、徳永から水戸の社長令嬢が気になっているって相談されて、俺はあっさり手を引くことを決めたんだ」

　続けられた隼人さんの説明に、思わず声をあげそうになる。瞬きひとつせず隼人さんをうかがった。

「徳永の話だと、仕事の関係で何度か彼女と会う機会があって惹かれたらしい。けれど、俺と結婚前提で会っているのも聞いていたから、直接俺に彼女との関係を聞いてきたんだ」

　それで隼人さんはなんて答えたのだろうか。

　緊張しつつ話の続きを待っていると、再び隼人さんの口が動く。

「正直に答えたよ。彼女とは親の勧めがあるから会っているもののお互いそこに気持ちはないって。最初から割り切った関係だから、もうすぐ関係を解消しようと思っているとも」

「そ、それは」

　やっぱり隼人さんは徳永さんに遠慮して身を引いたの？