敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
 それは私も同じだ。不安がないとはまだ言い切れない。でもそれ以上に隼人さんのそばにいたいと心から思える。

「あの、私も隼人さんに指輪をはめてもかまいませんか?」

 思い切って尋ねたら、隼人さんは目を丸くしてもうひとつのケースから指輪を取り出して差し出してくれた。

「どうぞ」

 余裕たっぷりの隼人さんに対し、緊張しながら受け取った私は、彼の長い指にぎこちなく指輪をはめていく。

「私も隼人さんを幸せにしてみますから」

 私なりの決意が少しでも隼人さんに伝わったらいい。そんな思いでこんな真似をしたけれど、隼人さんはどう思ったかな。

 ちらりと隼人さんをうかがうと彼は笑みを浮かべたままだ。

「結婚式の練習だな」

「そ、そうですね」

 そんなふうに受け止められているとは予想外だった。なんとなく照れくささが増して、彼から離れようとしたら素早く唇を重ねられる。

「これも練習ですか?」

 目をつむる暇もなかった私は、動揺を抑えて抑揚なく問いかけた。すると隼人さんは口角を上げニヤリと笑う。

「まさか」

 言うや否や口づけが再開し、腰に腕を回され彼の方に引き寄せられ、今度はすぐに終わらない。

「未希を愛している。永遠に、誰よりも」

 キスの合間に囁かれる言葉には隼人さんの本気が込められている。

 結婚式とか関係ない。私も彼も、いつだってお互いに誓い合えればいいんだ。

 視界の端に映る彼とおそろいの結婚指輪に目を細め、私は隼人さんの背中に腕を回した。
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