敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
エピローグ
「もうこの光景だけで涙が出そうだわ」

「本当。未希さんすごく綺麗よ」

 黒留袖に身を包んだ伯母と美奈子さんが、ブライダルルームにやってきて口々に感想を漏らした。

 若葉が生い茂り春よりも夏を感じる五月下旬 、今日は隼人さんと私の結婚式だ。

 純白のウエディングを身にまとい、スタッフ三人がかりで仕上げられていく様子は鏡越しに見ていて飽きない。

「こんな素敵なお嬢さんと結婚できるなんて隼人も幸せね」

 しみじみと呟く美奈子さんに、つい謙遜の言葉を口にしようとしたが、その前に伯母がにこりと微笑む。

「ありがとうございます。自慢の姪ですから」

 お礼を告げた伯母に目をぱちくりさせていると、美奈子さんが大きく頷いた。

「わかります。私も未希さんみたいな娘ができて嬉しいですもの。未希さん、隼人とケンカしたらいつでも言ってきなさいね。そのときは紅実さんと全力で味方になるから」

 美奈子さんの口調は冗談ではなく本気だ。すっかり意気投合した伯母と美奈子さんは気がつけば昔からの友達のように仲良くなっている。

 笑い合って楽しそうにしているふたりを見て心が温かくなった。

 母は今日の式には来ていない。一応、伯母が連絡したみたいだけれど、どういうやりとりをしたのかは聞いていないし、もう興味はない。

 母と離れる決断をして後悔するかと思ったが、意外と私の心は安定していた。

 私の意思を尊重してくれた隼人さんや隼人さんのご両親、伯母がそばにいてくれるおかげだ。
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