敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「はい。あとで確認をお願いします」
「お前な、恵の――先輩の手を煩わせるなよ。ある程度のデータは用意してもらって、あとはまとめるだけだろ? 仕事はさっさとこなせ」
私の返事に答えたのは橋本さんではなく、彼女の隣に立つ秀樹――木下さんだ。スーツを身にまとった彼は、私を鬱陶しそうな目で見る。
「先輩が優しいからって甘えるなよ。どうせ余計なことばっかりしてるんだろ。第一営業部は花形なんだ。仕事のできない人間はいらない」
「そんなふうに言わないであげて。沢渡さん、契約社員なんだし。多くを求めたらかわいそうでしょ?」
白々しくフォローされ、言い返す気力もない。それよりも早くこのふたりから離れたい。
「お疲れさまです」
軽くお辞儀をして挨拶をし、さっさとこの場から離れようとしたが、橋本さんがそれを許さなかった。
「沢渡さん、またお弁当? 倹約家よねー。でも家事できますアピールだけじゃ彼氏できないわよ? 結婚迫っているみたいで痛々しいし。ね?」
そこで隣にいる木下さんに話を振る。
「そんなのにつられて結婚するのは、馬鹿だけだな」
「失礼します」
私は頭を下げて駆け出した。勝ち誇った橋本さんの微笑み、嫌悪感が交ざった木下さんの表情。私が去ったあと、ふたりがなにを話すのか……考えたくもない。惨めで消えてしまいたい衝動を堪えながら私は目的地を目指す。
シャッツィも第一営業部での仕事も好きだ。橋本さん以外は基本的に皆いい人で、契約社員でも福利厚生などはしっかりしている。辞めるなど一度も思ったことがない。
けれど橋本さんに加え、木下さんの存在は私の契約更新の決意を揺るがしていた。
「お前な、恵の――先輩の手を煩わせるなよ。ある程度のデータは用意してもらって、あとはまとめるだけだろ? 仕事はさっさとこなせ」
私の返事に答えたのは橋本さんではなく、彼女の隣に立つ秀樹――木下さんだ。スーツを身にまとった彼は、私を鬱陶しそうな目で見る。
「先輩が優しいからって甘えるなよ。どうせ余計なことばっかりしてるんだろ。第一営業部は花形なんだ。仕事のできない人間はいらない」
「そんなふうに言わないであげて。沢渡さん、契約社員なんだし。多くを求めたらかわいそうでしょ?」
白々しくフォローされ、言い返す気力もない。それよりも早くこのふたりから離れたい。
「お疲れさまです」
軽くお辞儀をして挨拶をし、さっさとこの場から離れようとしたが、橋本さんがそれを許さなかった。
「沢渡さん、またお弁当? 倹約家よねー。でも家事できますアピールだけじゃ彼氏できないわよ? 結婚迫っているみたいで痛々しいし。ね?」
そこで隣にいる木下さんに話を振る。
「そんなのにつられて結婚するのは、馬鹿だけだな」
「失礼します」
私は頭を下げて駆け出した。勝ち誇った橋本さんの微笑み、嫌悪感が交ざった木下さんの表情。私が去ったあと、ふたりがなにを話すのか……考えたくもない。惨めで消えてしまいたい衝動を堪えながら私は目的地を目指す。
シャッツィも第一営業部での仕事も好きだ。橋本さん以外は基本的に皆いい人で、契約社員でも福利厚生などはしっかりしている。辞めるなど一度も思ったことがない。
けれど橋本さんに加え、木下さんの存在は私の契約更新の決意を揺るがしていた。