敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている～契約結婚なのに心ごと奪われました～
第四章　キスは契約項目になかったはずです
「未希さん、こっちはどうかしら？　これもきっと似合うわ」

「み、美奈子さん」

　もう十分だと伝えても、彼女は笑顔で服を選んでいく。土曜日の昼過ぎ、私は今、隼人さんのお母さまである美奈子さんと共に買い物に出かけていた。

　先週末に、私は隼人さんと共にご両親の元を訪れた。美容院に行き、服装にも気合いを入れて臨む。隼人さんは心配しなくてもいいと言ったが、私みたいな庶民が会社の跡取りでもあり社長でもある彼の結婚相手として認めてもらえるだろうか。

　雇用関係あっての結婚とはいえ能天気にはいられるほど図太くない。

　そもそも隼人さんは私との関係をなんて説明するのか。

　ハラハラしながら案内されたのは、どこか外国のような広大な庭と立派な建物だった。私の知っている一軒家とはまったく異なる。お手伝いさんも何人もいて、恭しく迎え入れられた。

『未希さん、いらっしゃい！　待っていたのよ』

　そんな中、二度目に会う美奈子さんは私を笑顔で出迎えてくれた。広いリビングに通され、前社長にも頭を下げる。

『実は、未希とは家事代行サービス業としてうちにやってきたときに知り合ったんだ』

　出会いを尋ねられたとき、正直に切り出した隼人さんに私は思わず目を剥いた。

　ご両親に家事代行サービスを利用しているのは内緒だったのでは？と思ったが、よくよく聞くと隼人さんが体調を崩した際に利用し、やって来た私がたまたま彼の会社の契約社員で、そんな偶然から親しくなったと説明した。
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