千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。
ろうそくに灯された火のように揺れている彼の炎が、迷っては諦めを浮かべるみたく火力を弱めていく。
「……戻りたくとも、もう戻れないんでしょう」
「いいや、そんなことはないぞ」
「戻れる、のか…?」
「そうじゃないかと思っている方法がひとつある。まあ…これもワシの実験よの。そのために───」
視線が移された先には、私。
お嬢さんを呼んだのだ───と、おじいさんの髭に隠れた唇が伝えてきた。
「おぬしらはまだ夫婦というわけではなさそうだが、恋人同士であれば問題はあるまい」
「えっ」
なにも構えていなかったため、思わず声が出た。
ハル様も同じように目を丸くさせては、そのあと切なそうに伏せる。
私は……ゆっくりと顔を横に振る。
「あの…、私たちは夫婦でもなければ恋人同士でもなくて…」
「なに!?違うのか!?」
「…はい」