千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。
これじゃあ私が教えられているみたいだ。
そんなにも緊張することはない、落ち着いて素直に話せばいいんだよ───と。
その普通が、私には慣れていないことだというのに。
「このだし巻き、うまいな」
「和食の基本はお出汁の取り方だって、料理長さんもいつも言っています」
「…一咲は、料理は得意?」
「あ、私は……ぜんぜんで。ダメですよね、あと1年もないのに…」
訪れた静寂に、ハッと視線を誤魔化す。
するとお弁当の蓋を閉めてしまったハル様。
「あとで食べる」と言って、今は私との会話を優先させたいようだった。
「俺は、きみには幸せになってもらわなければ困る」
「……しあわせ、」
「には、見えないんだどうしたって」
怯えている。
怖がっている。
私は工藤 音也という人間に、心の声さえも奪われている。