千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。




「お国のためにと逆らえない命令は、当時はどこにだってあった。…おまえは知らないだろうけどな、明治あとの昭和では……日本はアメリカとの戦争に負けたのだ」



本来であれば俺が知り得なかった未来の話だ。

明治あとに訪れた年号である、昭和。
それは一沙からも聞いていた。


しかしまさかそこで日本は戦争に負けているとは。


そのとき俺は、まだ保管庫のなかで海底を彷徨っていたのだろう。



「そこで神風(かみかぜ)特攻隊という戦略が行われての」


「とっこう、たい…?」


「爆弾と片道ぶんの燃料しか積まれない小型戦闘機に乗り、戦艦に突っ込むという……なんとも残忍な戦法なことか」



それほどまでに日本は追い詰められていたのだと。

その小型戦闘機の操縦者は、俺と変わらない歳の若者ばかりだったと。


聞いただけで動悸が速まった。


なんて恐ろしい戦術を使ったのかと、信じられない歴史を前に。



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