千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。




例えば未来から過去へと移動した場合、それは決まっていた歴史に存在しない人間が加わるということ。

そうなると過去が改ざんされてしまい、歴史と時間軸にヒビが入る。


しかし、その逆。


俺のように過去の人間が、いまだ作られている途中の未来へと行った場合は。

決まった歴史のない、これからいろんなものが新たに生み出されていく場所で、そこに俺が加わったところで。


────なにも困ることはない。


そして良かったのか悪かったのか、俺は過去では存在しなかった者として扱われ、現未来でもあの実験計画は非公開となっている歴史。

つまり、この時代に俺という存在を刻み込んでしまえば生きていくことができるのではないか。


そう言ってくれたのはツクモさんだった。



「その刻み込むというのは、戸籍を作ればよいだけの話」


「……戸籍、」


「なんらかの記憶喪失で身分すら分からない、ということ自体はこの時代でも通せるだろう。だから戸籍だ、戸籍さえ作れば……この世のお前として生きられるのではないか」



今は華月苑に世話になっている身だが、戸籍さえ作れば身分を作ることができる。

身分ができれば、基本できないことはない。

出た先で金を稼ぎ、家を借り、生活することができる───と。



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