千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。
「なにか……ありましたか…?」
支配人がいない毎日だからあなたがしっかりしなさい───と、透子さんに言われていたのは私だった。
情報を共有することは大切だ。
とくに上の人間であれば、なおさら。
私は経験も歳も浅いけれど、立場としては時期当主の婚約者。
いずれ華月苑の女将となる人間。
「一咲、今日はあなたに頼みたいことがあるの」
「頼みたいこと、ですか…?」
「……病院に行ってもらっていいかしら。支配人の荷物を揃えて」
「…え…?」
入院になった、と。
声はしゃがれていたし、いつも喉の違和感を気にするように押さえていた。
それが何かしらの炎症を起こしてしまったのか、入院だなんて……。
しかし、私の想像を遥かに超えていた。
「……癌(がん)、ですって」
聞いた途端、誰もが笑顔をなくす病名。
いろんな種類があることは知っているし、今の医療技術は早期発見であれば治るものも多いと聞いたことがある。