千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。
それこそ家業は継ぐことで後世に残していくことができるわけで、この花江家の300年だってそうだ。
みんな我慢して、この伝統を守ってきた。
「……透子さんは、ここでどうしたいですか…?」
「…どうしたいって?」
「今のまま世話役の仲居で、それでいいのですか…?」
言うようになったな、なんて顔を一瞬だけされた。
ふっと瞳を伏せて、またそれも運命だと言うように。
「…仕方ないじゃない。あたしは分家の人間なんだから」
本当は透子さんも分家だから我慢していることがあるんだと思う。
透子さんからすれば私という存在は、もしかするととてつもなく憎む対象だったのかもしれない。
養子として迎え入れられて、流れるままに華月苑の未来を背負うことができて。
「一咲。あなたが華月苑を引っ張るということは……選べる立場になるということよ」
「……選べる、立場…」
「…そう。選べる立場になれるの」
2度、しっかりと言った透子さん。
私の選択肢は、こうして1つに絞られてしまった───。