千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。




明るい海より暗い海のほうがすき。

もっと詳しく言うなら、夜明け前の海。


カモだって飛んでいない、ただ波の音だけが広がる静かな海がいちばん。


今日は2番。

いちばんだと心に残ってしまいそうだから、2番目に好きな夜の海だ。



「すこし肌寒いな」



「上着を持ってきたほうがよかったかも」と言われて、ゆっくり首を横に振る。


繋ぎたいからといって繋がれた手。

旅館を抜け出しても大丈夫な、22時過ぎ。


お話したいことがあります───そう言って時間を作ってもらった私に対して、「俺も話したいことがあるんだ」と、同じように返された。



「ハル様、…海、入りたいです」


「え、今?」


「…うん」



砂浜は着物だと歩きづらい。

とのことで私服を身につけた私たちは、裾を捲って波打ち際に寄った。



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