千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。
おなじ世界に居てくれる。
そのほんの小さな“きっかけ”のようなものになれていたのなら、私はそれだけで幸せだ。
「ツクモさんと出会ったこともまた運命のような必然だと思うんだ。だから俺はその必然に、甘えてみてもいいんじゃないかって」
「…いい、です、いいに決まってます」
「…うん。ありがとう」
握られるたびに温かい手だなと、思う。
すっぽり私の手を包み込んでしまう。
………また、こうしなきゃダメなの。
したくないしたくないと願いながら、しなくちゃダメになる。
「一咲…?」
握ってくれていた手を、離す。
戸惑う声は波に消されちゃったと聞こえないふりをして、ぎゅっと胸の前で握ったこぶし。
「じつは一咲と一緒に行きたい場所があって、」
「もう、華月苑を出て行ってください」
「…え?」
「…やっぱり華月苑にとってハル様は少し変わりすぎているので……、この旅館を私は守っていかなくてはいけないんです」