千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。
ああもう、どうして。
どうしてどうしてどうして。
震えないように、ふるえないように。
私にとっていちばん言いたくない言葉を言って、いちばん彼を傷つける言葉を並べればいいだけ。
「守っていくって…、いま大変な状況なのは俺も知っているけれど、一咲はずっと華月苑にいるつもりなのか」
うなずけばいいだけ。
そんな簡単なことが、どうしてこんなにも難しいんだろう。
「俺のような男は、あの旅館にとって、きみにとって……迷惑ということか…?」
「………、」
「俺のことが、嫌い?」
「…っ」
はい───、
小さく小さく答えてしまった。
私が華月苑を選べば、上の立場になることができる。
選べる立場になるために私はこの道を選んだ。
選べる立場になって、私は音也様と透子さんにあの旅館を渡すの。
ハル様が自分の道を決めたことは、とても今の私にとって好都合でタイミングが良かった。