千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。
時を越えたハル様




従業員がひとり、退職していった。


力持ちで仕事が誰よりも早いとても変わった裏方スタッフさんで、女性だけじゃなくみんなに人気者な好青年。

辞めてしまうことに誰もが何度も引き留めたけれど、彼は「お世話になりました」と頭を下げて。


九十九 時榛として───華月苑を出ていった。



「愛美は……、俺のせいで…死んだ」



病室に飾ってある花瓶の水替えをし終わったところで、彼は言う。


今では命の灯が消えてしまうそのときまで、ただ呼吸を繰り返しているだけのような。

その点滴も、酸素マスクも、本当に意味があるのだろうかと疑問になる。



「あいつは…、今日はやめようって、言ってたんだ……、でも……流星群、見たくて、俺」



掠れている、なんてほどじゃない。

今はもう、あるかないか区別できない……声。



< 237 / 262 >

この作品をシェア

pagetop