千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。
時を越えたハル様
従業員がひとり、退職していった。
力持ちで仕事が誰よりも早いとても変わった裏方スタッフさんで、女性だけじゃなくみんなに人気者な好青年。
辞めてしまうことに誰もが何度も引き留めたけれど、彼は「お世話になりました」と頭を下げて。
九十九 時榛として───華月苑を出ていった。
「愛美は……、俺のせいで…死んだ」
病室に飾ってある花瓶の水替えをし終わったところで、彼は言う。
今では命の灯が消えてしまうそのときまで、ただ呼吸を繰り返しているだけのような。
その点滴も、酸素マスクも、本当に意味があるのだろうかと疑問になる。
「あいつは…、今日はやめようって、言ってたんだ……、でも……流星群、見たくて、俺」
掠れている、なんてほどじゃない。
今はもう、あるかないか区別できない……声。