千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。




拝啓、陸奥 時榛 様。


あなたに会えなくなって幾年が経ったのでしょう。

毎日と、あなたの帰りを待っておりました。


海を渡って、航海に出て、その先であなたは笑っているものだと私は信じております。


そう、信じさせてくださいね。


けれど、ひとつだけ我が儘をお許しください。


会いたいです。

ハル様、
つぼみはあなたに、とても会いたいのです。


忘れる前に、忘れてしまう前に。



(……そう…、私は……、)



─────絵を、描いたの。



「あと20分で本日は閉館となりますが…」


「そ、それでもいいです…!」


「…かしこまりました。では、どうぞ」



バスと電車を乗り継いで、海沿いに建てられた博物館。


外装は当時の形のままだという。

明治後期の面影を残した、石造りが特徴的な洋風の建築物。



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