千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。
閉館20分前。
私は何かを、誰かを探すように、館内へと入った。
「────………」
見つけたひとりの後ろ姿。
そこまで多くはない展示品が並んだ館内の端、彼は立っていた。
当時使われていた資料や模型のなか、小さな絵でもあるのだろうか。
私の角度からは見えないそれを、ずっと見つめているひと。
「変な感じがするよ」
顔を向けられないまま、彼は話し出す。
「俺にとっては当たり前なものばかりだったはずなのに、“昔”なんだなって思う」
暮らし、文化、歴史、芸術。
ここは明治の時代が集まった場所。
私からすれば見慣れないもので溢れていて、時代の変化は時折として怖くも感じてしまう。
「俺は今、運行会社で働いてる。バスの運転手に……なったんだ」
慣れないことばかりだけど楽しい、と。
やっと先週から一人暮らしを始めて、それまではツクモさんのところにお世話になっていたのだと。