千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。




閉館20分前。

私は何かを、誰かを探すように、館内へと入った。



「────………」



見つけたひとりの後ろ姿。

そこまで多くはない展示品が並んだ館内の端、彼は立っていた。


当時使われていた資料や模型のなか、小さな絵でもあるのだろうか。


私の角度からは見えないそれを、ずっと見つめているひと。



「変な感じがするよ」



顔を向けられないまま、彼は話し出す。



「俺にとっては当たり前なものばかりだったはずなのに、“昔”なんだなって思う」



暮らし、文化、歴史、芸術。

ここは明治の時代が集まった場所。


私からすれば見慣れないもので溢れていて、時代の変化は時折として怖くも感じてしまう。



「俺は今、運行会社で働いてる。バスの運転手に……なったんだ」



慣れないことばかりだけど楽しい、と。

やっと先週から一人暮らしを始めて、それまではツクモさんのところにお世話になっていたのだと。



< 253 / 262 >

この作品をシェア

pagetop