千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。
「…この……絵、は……、私が……描きました」
「……うん」
「…これは……、わたしが…」
ほんとう、本当なの。
盗作というわけでもなくて、嘘を言っているわけでもない。
白いシャツを着て、腕をまくって。
誰を見ているのか、その目の前には誰がいるのか。
揺られる短髪と爽やかな笑顔。
屈託なく笑う────ハル様を。
《明治後期から昭和初期に描かれただろう肖像画》
作家名も、詳しい説明も、なにもなく。
ただそう表記された1枚の絵。
そのなかで笑うあなたが、いま私の目の前にいる。
「私が…っ、わたしが、っ、ハルさま、」
「…うん」
止まらない涙にやられて、ガクリと膝を崩した。
同じようで、ちがう。
違うようで、おなじ。
色づかいが違うとか。
紙の素材や質が異なっているとか。
私が描いたハル様のほうが髪が伸びている、とか。
でもこれも正真正銘───…私が描いたんだ。
初めて描いた人物画だったの。
風景しか描いてこなかったのに、これだけはと思ってペンを滑らせたもの。