千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。
「すまない。部屋を散らかしてしまった」
「あ…、いえっ、こちらこそ申し訳ございません…!すぐに綺麗に致します…!」
「いや、俺がしたことだ。俺も手伝おう」
「お客様にそんなこと…!座っていてくださいっ、お、お掃除は好きなので…!」
……お掃除は好きなのでって、そんなこと。
わざわざ言う必要もなければ、それを言ってしまったら逆にお客様を責めているように捉えられるかもしれないのに。
「体調も心配ですので……ど、どうぞ」
私は実践に弱い。
マニュアル通りにしかできない。
なんとか彼には腰を下ろしてもらい、私はホウキとちり取りセットを取り出して、畳に散らばった茶葉を素早くかき集める。
(よかった…、やることがあって)
内心、ホッとしていた。
本当であれば作業しながらお客様が退屈しないよう、観光名所についての会話だったりを出すまでが仕事なのだろうけれど…。
そんなもの私には高難易度すぎる。
宿で働く者として知識だけは仕込まれてきたが、コミュニケーションを必須とするおもてなしだけでなく、運営管理なども大の苦手だった。