千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。
そんなに変なことを言ってしまったかな…。
驚く以上に、息を飲んだリアクションだった。
「もしやそれは…年号のことを言っている、のか…?」
「え…?そう、です」
「しょうわ、の……前は?」
「ええと、明治になります」
「っ…!!なら明治は、今からどのくらい前なんだ」
そこを食いぎみに聞かれるとは思わず、記憶喪失な人間の脳内はどんなものなのかと、そちらに興味が湧いた。
「どのくらい…、150年は…いってないと思いますが、それほどじゃないかと…」
「……そう…なの、か」
これじゃあゆっくり寝られるものも寝られなくなってしまう。
空っぽな部屋にたくさんの情報がいっきに詰め込められるのだから、あたまが混乱どころの騒ぎじゃない。
もっと穏やかな話をすればよかったと、また独りでに落ち込む。
明日みんなにどう説明したらいいだろう…。
素直に記憶喪失だと説明して、快く信じて受け入れてくれる人間たちだとは到底思えない。