千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。
「その人は学者さんをしていた方らしいんです」
「…学者…?」
「はい。私もよく分からないのですが…、個人医らしいので、行きやすいかとも思って…」
学者さんというと、主な活動は研究だろう。
研究というものには考えられる以上にたくさんジャンルがあると、聞いたことがあった。
行ってみて「じつはニワトリの生態についての研究でした」なんてことになる可能性だってあるわけで。
でも、逆にそういう人のほうがいいのかもしれないとも、私はちょっとだけ思っていた。
「学者…ということは、物知りな人間なのか。たとえば……人体のことについて、とか」
行ってみなければ分からない。
そうだったら頼ってみればいいし、違ったなら帰ってくればいい。
そんな意味を込めて、私はうなずいた。
「……ごめん。やっぱり一緒に行ってほしい」
一咲───と。
初めて呼ばれた名前。
申し訳なさそうな顔をして伺ってくる青年に、私は柔らかく微笑むと。