千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。




ここまで誰かに気持ちを伝えたことは、伝えたいと思ったことは、初めて。

自分が言いたかった言葉をありのままに伝えたのは、自分のためにも伝えたのは。



「それに、ツクモさんもいますから」



帰り際、渡された文があった。

それは華月苑の代表取締役社長であり現当主、つまり私の義父に当たる人間に渡してくれという、ひとつの手紙。


そこには「華月苑にて世話をされているハルという男は、自分の知り合いだ」と書いてあった。


お爺様との親睦の深さまでもが綴(つづ)ってあり、つまり要約すると。

自分の立場をできるかぎり使い、「しばらくのあいだそちらに預けるが、文句はないな?」という脅し。


もちろん希少な研究対象という、学者さんとしての目的のためもあるかもしれないけれど。


間違いなくツクモさんの優しさだった。



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