千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。
しかし今日だけは本当の本当に急ぎの用事ができてしまったため、おしながきの説明も丁寧にはできないまま。
心苦しいなかで頭を下げた。
「急ぎ…?なにかあったのか?」
「…いえ、こちらの問題ですので。ハル様はごゆっくりご夕食を取られてください」
「一咲、俺は言ったはずだろう。きみにはたくさんの恩があると」
俺を頼ってくれ、と。
そんな目で懇願されたなら頼ってしまいたくもなる。
だけでなく、ただ、彼と一緒にいたい時間を増やしたかった欲がほとんどを占めていた。
言えないけれど、こんなこと。
「それに、冷めてもうまいんだよ。ここの飯は」
あなたのそういうところが素敵だ。
少年のように笑う顔が、素敵だ。
車の免許を持っていない私は、着物姿のまま宿を飛び出して坂の下まで走っていくつもりだった。
───が、やっぱりこうなるんだ…と、どうしてか予測できてしまっていた自分。