千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。




「…もしや前に華月苑で雇ってはくれないかと紹介してきたのは、彼のことか?」


「え、ええと…、そのことについてもお義父様、あとでお話が…」


「わかった。まあ、とりあえずは助かったよ。今から業者は───」


「必要ありません」



何事だ。
これはどんな状況だ。

スマホで業者さんに連絡しようと思っていたし、もちろん義父もそのつもりで私を呼んだのだろう。


しかし、当たり前のようにエンジンが止まった車の後部、ひとりの青年は片手で押し始めた。



「き、君は力持ち…なんだな」


「はい」



片手のみでスイスイと回り出すタイヤ。

ぐんぐん坂を上ってゆく1台の自動車。



「大丈夫ですか?」


「…はは、逆に心配されてしまうとは。私たちは問題ないが、君は…大丈夫か…?これは車だぞ…?人間の背中を押しているようにしか見えないが……」


「平気です。もう少しなので頑張りましょう」


「「……………」」



無事に車を連れて3人一緒に旅館に戻ったという、まるで嘘のような本当の話。



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