千歳の時を越えたハル様へ、今日もあなたを愛しています。
そしてツクモさんからの大切な預り人ということで。
華月苑からそう遠くない場所にある社員寮ではなく、彼は今までどおり山林館の客室に住み込む形となった。
「ねえ、ハルさんってあの台風の日に支配人が助けた方でしょう?改めて見るとめちゃくちゃ格好良くない?」
「もう、あんたってほんと若い男を見ると目がないんだから」
「そんなこと言って、抜け駆けするつもりなんでしょ?」
「ちょっとやめてよー。聞こえちゃうじゃない」
散らばりながら噂立てをする若い女性スタッフの声が、私のところにも聞こえてきた。
いちばん若くて20代後半の男性従業員の華月苑に、ハタチ前後の青年が来ることは私が知るかぎり初めてのこと。
どちらかというと女性スタッフが多い華月苑。
年齢層も幅広く、なかには新卒社員として働く私と同じ歳の頃の女の子も複数人いる。