相思相愛・夫婦の日常~カナ♡ネオ編~
「………」
ゆっくり嶺音に近づいてくる。
そして、嶺音の頬に触れた。

「言って?」

「………」
悶々と考える。

(あ!よし、仕事が失敗続きだったことを話そ!)

「ネオちゃん!」

「仕事で…ね」

「うん」

「失敗続きだったの。
こんなことあんまないから、落ち込んでただけ」

「………」

「………」
(なんか言ってよぉ)

「わかった。
飯は?食べた?」

「ううん。
帰って寝ちゃったから」

「そっか。
じゃあ、なんかちょっと作ろうか?
スープとか」

「ううん。
時間、遅いし」

「………
そう。じゃあ、お風呂入ろ?
沸かしてくるね」

「う、うん…ありがとう」


ガシャンと、風呂場のドアを閉めた奏弟。

「なんで、嘘つくの?
なんで、話してくんないの?
そんな俺って、頼りない?
……………どうせ、嘘つくなら…完璧につけよ…!
……………
………って…面と向かって言えない俺も俺か…」

怖かった━━━━━━
嶺音の口から“頼りない”と聞かされたら、やっぱり傷つく。

鈍感でどこか抜けている、嶺音。
甘えん坊で、可愛い。

でもいつも明るくて、真っ直ぐで、凛としている。

奏弟にとって、やっぱり嶺音は大人でどこか遠い存在。

だから必死に背伸びをして、追いかけている。

ずっと……今でも━━━━━

「あーーーもぅーーー!
早く大人になりてぇーーー!!!」

奏弟は、風呂場で一人思いを吐き出すように声を張り上げた。


そして次の日━━━━━━━
嶺音は、翠川に告白された。

「“嶺音さん”
改めて、言わせてください!
俺は、翠川 伊月《いつき》と言います。
ずっと、嶺音さんのことが好きでした。
だから━━━━━」

「ちょ…ちょっと待った!!」

「え?告白、まだ終わってません」

「いやいや、翠川さん知ってるよね?
私、既婚者なの!」

「はい、もちろん!」

「そ、そんな…満面の笑みで……」

「嶺音さんには失礼ですが…
俺は、大嫌いなんです。
岩谷 奏弟が。
そんな奴から引き離したいと思ってます!
それで、俺のモノにしたい。
ずっと見てました!
嶺音さんのこと」

「ごめんなさい、私は━━━━━」
「わかってます。
でも、絶対、諦めませんから!」

翠川は一方的に言って、頭を下げ去っていった。
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