相思相愛・夫婦の日常~カナ♡ネオ編~
次の日。

奏弟が出勤すると、愛田と翠川がいた。

「おはよーございまーす」

「おはよ!
奏弟、新しい執事だ。
イツキ。
で、こいつが奏弟」

基本的にここでは、苗字は必要ない。
みんな、下の名前で仕事をする。

だから奏弟はまだ、目の前にいるのが“あの”翠川とは気づいてない。

「イツキです、よろしくお願いします」

「ん。よろしく」

「………」
(こいつが、嶺音さんの……)

「ん?なんだよ」

「いえ!」
微笑む、翠川。

そして奏弟が更衣室で着替えて戻ってきた。
「………」
(確かに、これはカッコいい。
さすが、嶺音さんの旦那って感じか…)

接客もスマートで、奏弟がNo.1である理由がよくわかる。
カヲル達も出勤してくると更に華やかになり、翠川は圧倒されていた。

これが“あの”LOVE blackの連中なのか?

そう思う程、奏弟達が綺麗で、憧れさえ感じてしまう。

威圧感しかなかったあの恐ろしい雰囲気は、柔らかく。
殴ることしかしなかったあの手で、優しくもてなす。
凄むような言葉しか言わない口からは、甘く癒す言葉。

「イツキ」
「あ、はい!」

「どう?
雰囲気」
「凄いです。
上手く、言葉が見つかりませんが」

「だろ?
頑張ってくれてるよ、奴等は」
「………」


そこに客が紅茶をこぼして、声が聞こえてきた。
「ひゃっ!?」

するとすかさず奏弟が駆け寄った。
「ヤエ様!大丈夫ですか!?」

「あ、はい。すみません!」

「やけどなどは?されてませんか?」
スカートに紅茶がかかり、それを奏弟が拭いている。

「えぇ。もうほとんど冷えてたし、大丈夫です!
スカートも、大丈夫ですよ!どうせこのまま帰るし、問題ありません!」

「さようですか?
では、紅茶をお持ちしましょうね!
おしぼりも持ってまいりますね!」

「え?紅茶はいいですよ?
こぼしちゃったのは、私だし…」

「いえ!遠慮なさらないでください。
少々、お待ちくださいね!」

「━━━━ヤエ様、どうぞ?」
「すみません、ありがとうございます!」

「まだ、お時間はあります。
ごゆっくり、お寛ぎください!
…………フフ…ちゃんと、フゥーフゥーってされて飲まれてくださいね(笑)
こちらの紅茶はまだ熱いですので、やけどしたら大変ですから!」

「あ…あ、はい…/////」


「………」

「だから言ったろ?
“ここの従業員をナメるな”って」

意味深に、愛田が微笑んでいた。
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