エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

 並んでソファに座ると、私は部屋から持って来ておいたプレゼントを柊哉さんに渡した。

 「あの、これ、大した物ではないんですけど、クリスマスプレゼント...です」

 「え?プレゼントまで用意してくれたの?さっきの料理だけでも十分なのに...ありがとう」

 少し戸惑いながらも受け取ってくれた。
 私が選んだ物を気に入ってもらえるか、彼の反応にドキドキしてしまう。

 「マフラーか、嬉しいよ。ありがとう、さっそく明日から使わせてもらうよ」

 満面の笑みでこちらを見て頭を撫でてくれる。...よかった、ほんの気持ち程度だけど、喜んでもらえたみたい。

 「ん? これは?」

 次にころんと丸い形の物出して、不思議そうに見ている。

 「これ、充電式のカイロなんです。...柊哉さん、指先が冷えていることがよくあるので温まるものがあると良いかなって...」

 「へぇ、そんな物があるんだ。実は寒い時期は、オペの前に指先を温めるのに苦労する時があるんだ。今度からはこれを使わせてもらうよ、優茉のパワーももらえそうだ」

 「ふふっ、そうですね。私のパワーも充電しておきますね」

 そして最後に、袋の中に残っていた物を取り出す。

 「...これは? バスソルト...?」

 「入浴剤なんですけど、それも先ほどと同じ理由で身体を温めてもらえたらなぁと...。
 あの、それ、塩に含まれるミネラルが末梢神経を温めて血行を促進する作用があるんです。あと、オペで立ちっぱなしの時とかお湯の中でマッサージするとむくみの改善にも効果があるみたいで...」

 なんとなく恥ずかしくて、言い訳のようにペラペラと説明する私をみて、ふっと笑ってぎゅっと抱きしめてくれる。

 「ありがとう、優茉。ちゃんと優茉の気持ちは伝わったよ。俺のことを考えて選んでくれて本当に嬉しい。こんなに心まで温かくなるプレゼントは初めてだ」

 ...さすがにこれを入れて一緒にお風呂に入りたいとは言えなかったけれど、気持ちは伝わったみたいでよかった。

 しばらくぎゅうっとハグをしたあと、ちょっと待っていてと自室へ入っていく。
 すると、後ろ手に何かを持って戻ってきた。

 「優茉、これ。 受け取ってもらえる?」

 そう言って私の前に小さな箱を出して、そっと開ける。

 「......え?」

 その箱には、誰もが一度は憧れる有名なジュエリーブランドのロゴが刻まれていて、箱の中には...

 「こ、これって......」

 キラキラと光に反射し、眩しいほどの輝きを放つダイヤモンドが嵌め込まれた指輪。

 「優茉、俺と結婚してくれる?」

 驚いて柊哉さんの顔を見ると、少し不安の色が混ざった真剣な眼差しで射抜かれる。
 
 「......本当に、私で、いいんですか?」

 「俺には優茉が必要なんだ。これからも俺のそばにいてほしい」

 「...嬉しいです。私も、ずっと、柊哉さんのそばに、いたいです」

 気がつけばぽろっぽろっと溢れ出した雫が頬を伝い、慌ててそれを拭って笑顔を作ると、柊哉さんは安心したような顔で私の頬に手を添える。

 「優茉、愛してる」

 そっと唇を合わせてから、強く強く抱きしめられた。

 「んっ、苦しいです、柊哉さん...」

 「ごめん、でももう少しだけ」

 少し力を緩めて頭を撫でながら、スーハァーと深呼吸している。

 「優茉...、俺、もう...」と彼が何かを言いかけたとき、後ろでガサっとソファから物が落ちる音がした。

 ゆっくりと離れ柊哉さんが落ちた物を拾うと、それは先ほどの指輪と同じロゴが入った小さい紙袋。

 指輪を入れていた袋かな?と思っていたけれど、彼はふっと自傷気味に笑って「忘れていた。こっちがクリスマスプレゼント」そう言いながら紙袋から何かを取り出す。

 「え?プレゼントは今...」

 「指輪はクリスマスプレゼントじゃないよ。こっちも受け取って?」

 そう言われ手のひら程のサイズの箱を開けると、 ローズピンクの革製のカードケース。ブランドのロゴやお花の模様が型押しされていてとても可愛らしい。

 「わぁ、可愛い...。カードケースですか?」

 「うん、キーケースにどうかと思って。優茉のにはカードが入らないだろう?」

 嬉しい...そんな所まで気にしてくれていたんだ。
 このマンションはカードキーだけど、私が今まで使っていた物には入らないのでいつもお財布に入れていた。

 「ありがとうございます。でも、こんなに高価なものを二つも...」

 「優茉、俺にはこのプレゼントが今までもらったどんな物よりも最高に嬉しいよ。優茉の想いがたくさん込められているから。
 だから、優茉も俺の気持ちを受け取って?」

 小さな箱からそっと指輪を抜き取って、私の左手薬指にスッとはめてくれた。

 「...とっても、綺麗です。それに、ピッタリ...」
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