エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜


 柊哉さんが出て行った玄関を、しばらくぼんやりと見つめながら考えていた。

 院長は大丈夫かな...。容体がわからないようだったけれど、突然倒れたのなら脳や心臓の病気の可能性もある。
 柊哉さん、一人で大丈夫かな?私もついて行くべきだった?でも、私がいても邪魔になっていただけだろうし...

 足元から身体が冷えてきたのを感じて我にかえり、玄関でずっとこうしていてもしょうがないのでリビングに戻ると、テーブルに置いたままのプレゼントが目に入る。

 婚約指輪...。まさかもらえるとは想像もしていなかったから、すごく驚いたけど本当に嬉しかった。
 婚約者になってほしいとは言われていたけれど、面と向かって結婚の二文字を聞くと、胸が熱くなって自然と涙が溢れていた。

 それに、私のために作られた様にぴたりと指にはまった指輪。柊哉さん...こんなに忙しかったのに、いつ用意してくれたんだろう。

 そういえば、抱きしめてくれた時少し焦ったような切ないような表情で何かを言いかけていたけれど、何て言おうとしたのかな.,.?

 湯船に浸かりながら、考えるのは彼の事ばかり。

 ずっと考えていると会いたくなってしまい、それを誤魔化すようにベッドに潜った。
 先ほどメッセージが来ていて、院長は大事にはならなかったと聞いて安心したけれど、やはり今日は遅くなるよう。

 ベッドに入ると柊哉さんの香りが鼻を掠めて、余計寂しくなってしまう...。でも、起きていても迷惑だろうしいつ戻ってくるのかもわからない。

 自然と自分がいつも寝ている右側から、彼が寝ている左側に移動してきて、柊哉さんがいつも身体に巻き付けて眠るふわふわの毛布を手繰り寄せる。

 それに包まると、彼の香りが強く感じられて、ふわふわの毛布は少しだけ抱きしめられている時の温もりを思い出す。
 ゆっくり深呼吸しているとだんだん眠くなってきて、そのまま夢の中へと誘われた。
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