エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜
週末はほとんどお家の中で過ごし、ゆっくりと身体を休めたおかげか、今朝は少し調子がいい気がする。
出勤し着替えを済ませナースステーションに向かうと、なんだかいつもと少し雰囲気が違うような...。
「おはようございます。何かあったんですか?」
気になったので花村さんに声をかけてみると「あ、おはよう!宮野さんは知ってる?香月先生のこと!こっちに戻ってこられるんですって!それでみんなちょっとそわそわしちゃって!」と可愛らしい笑顔で返させた。
あぁ、そういえば先週天宮さんがそんな事を言っていたっけ。
「そうなんですね。この前天宮さんからお聞きしたんですけど、先生の事はよく知らないんです」
「本当に?じゃあ楽しみにしてて!腕は確かだしすっごいイケメンなのよ!あぁでも、宮野さん達の仕事は増えちゃうわね」
私より少し年上の花村さんもたしか既婚者だったはず。旦那様がいてもそわそわするほどのイケメンって...その上腕もいいなんて。
本当にそんな人がいるのかな?まるで小説に出てくる主人公みたい。
その後、申し送りが終わり作業に取りかかろうとした時、外科部長の橘先生に呼び止められた。
「あっ、天宮さん宮野さん。ちょっといい?」
「はい、なんでしょう?」
天宮さんと一緒に向き直ると、一枚の紙を渡される。
「これ、院長から預かったんだ。香月先生のスケジュール。なんでも、もうオペの依頼が殺到してるみたいでね。院長の話だと昨日帰国したばかりらしいけど、明後日からのスケジュールはいっぱいだ。人気者は大変だね〜」
他人事のようにははっと目尻に皺を作りながら笑う橘先生は、院長の知り合いで長年この病院で働いており、息子の香月先生のことも良く知っているそう。
「戻ってきて早々これだもんなぁ。もちろん彼を必要としてる人が大勢いるのは確かだけど、仕事ばかりしていて心配だと院長も言っていたよ。もういい歳なのに結婚もしないつもりなのかってね」
「香月先生ならお相手に困る事なんてなさそうですけどね。まぁ、ハイスペックすぎて近寄りがたい感じはありますけど」
「ははっ。女の子達からしたらそう見えるものなのかい?見た目だけじゃなく中身もいい奴なんだけどなぁ」
二人の会話を聞きながら、紙に書かれた文字に目を落とすと、確かにすでにオペの予定がかなり埋まっている。それも、難度が高いと言われる頭蓋底脳腫瘍、脳動静脈奇形などベテランの先生が担当するような症例ばかり...。
本当にすごい先生なんだなぁと思いながら、パソコンのスケジュール管理を開き香月先生の分を追加していく。